ビヨンド ザ ホライズン  Beyond the Horizon


第80回「ビヨンド ザ ホライズン・27章」


新しい建物を建設する過程で、どうしてもスクラップできない建物があった。

それは、東宮仮御所として今上陛下(平成天皇陛下)が半年に渡って滞在され、終戦を迎えられた別館だ。

父(南間元)がやりたかったのは、この別館を移動して、ライブラリーとして保存していく事だった。

しかし、4000坪しかない敷地の中で、どうしてもレイアウトできなかった。

色々考えたすえに父が選んだのは、この建物をしっかり保存していく事ができる人に売却することだった。

早速、その様な人を見つけていく中で、父が本気で交渉しようとしたのは2件だった。

1件は、アメリカでステーキチェーンを展開して大成功しを収めたBオブトーキョーのRA氏の会社だ。

もう1件は、ブラジルで大成功した日系人I氏だった。

父は前者に魅力を感じ、代理人と交渉に入った。

具体的には、シカゴに持っていくという話が煮詰まっていたが、

ある時、横川栃木県知事から電話が入った。

「あんちゃん、別館を海外に売るという噂があるが本当か?」

「はい、そのつもりで話を進めているところです。」

「これだから若い人間は困る。いいかい、あんちゃん。

あの建物は、昭和の歴史の1ページなのだよ。

絶対に海外に出してはいけない。いや、栃木県の外にも出さないように考えなさい。」

父は本当にそうだと思った。

全く自分の思慮の無さが恥ずかしかった。

改めて相手を探していく中で、縁あって益子町の塚本武氏と知り合った。

塚本武氏には様々な事情をご理解いただき、別館をお譲りする事になった。

勿論、無償でだ。

そして「檜の間」という、総檜造りの別棟もお譲りした。

塚本家には、今もこの建物を「平成館」(益子南間荘)として大事に保存していただいている。

父は今でも、横川栃木県知事や塚本武氏に感謝している。

自分が果たすべき責任を、この方々のお陰で全う出来たと思っているからだ。